ひつじのショーン バックトゥザホーム

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    夏休みもほぼ終わりですが、一見子供向けに見えて

    ややもすると避けてしまいがちな名作を紹介したいと思います。

     

    ひつじのショーン バックトゥザホーム

    とにかく家に帰りたい

     

    あらすじ

    ひつじのショーンたちは農場で、牧羊犬のビッツァーや牧場主と平穏な

    日々を過ごしていた。

    しかしまあ毎日同じことの繰り返し。決まったスケジュールをこなすだけの

    日々に利発なショーンは飽き飽きしていた。

    牧場主もスマホいじったりして牧羊犬ビッツァーもどこかむなしそう。

    そんなとき、ショーンは巧みな手段で牧場主をキャンピングカーの

    中でお昼寝させ、その間家の中でみんなで寛いじゃおうと思いつきます。

    ところが、ついついやりすぎてしまい、爆睡の牧場主を乗せたキャンピング

    カーは都会まで突っ走り大事故に。

    牧場主はなんとその影響で記憶喪失になってしまいます。

    ショーンたち羊とビッツァーは都会まで出てきて牧場主を連れ戻そうとしますが…

     

    この作品、公民館の夏休み子供映画会で500円で観ました。

    ひつじのショーンはイギリスのストップモーションアニメですが

    Eテレでたまたまやってたら見るくらいの存在でした。

    夏休み子供映画会ですから小さい子供を連れた家族連れでごった返して

    阿鼻叫喚、もといテーマパーク状態です。

    私も子供が楽しんでくれたらいいかな、寝れたら寝ちゃおうかなくらい思っていました。

    ところが映画がはじまるやいなや、一瞬たりとも目が離せない

    大人でもおもしろい小ネタ・中ネタの連続で眠る暇なんてありませんでした。

    それどころか会場の子供たちの誰よりも感動してしまいましたので

    熱く紹介したいと思います。

     

    ひつじのショーンの概要からいくと、イギリスの片田舎の牧場に

    異常に賢い若い羊、ショーンとその家族らからなる飼育羊がおりました。

    飼育しているのはアラフォーくらいのやや太めの男性。

    ショーン達から「牧場主」と呼ばれけしてイケているとは言いがたい風貌の

    彼とショーン、そしてショーンの生まれたときからの幼馴染で

    腐れ縁の牧羊犬ビッツァー。

    ショーンとビッツァーと牧羊主は長い付き合いで、お互い信頼関係は

    あるものの、あまりに退屈な毎日にショーンがちょっとしたいたずらを

    仕掛けてしまいます。

     

    そのせいで牧羊主は自分が羊飼いであることも、田舎に住んでいたことも

    忘れ、大都会で異邦人として自分探しをするはめになります。

    追いかけてきたショーンたちは買った洋服を二人羽織して人間になりすまし、機転を利かせて

    探し回るうちに不細工な野良犬、スリップと知り合います。

    都会慣れしてないショーンたちに、根っからの都会犬スリップは都会の歩き方を

    教えてくれて仲良くなります。

    が、都会には動物保護という名のもとに野良犬や野良猫、野良鳥、野良魚などを次々と

    捕獲しては牢屋みたいな檻にぶちこむのが生きがいの男がおりまして、スリップと

    ショーンは捕まってしまうのです。

     

    この檻でのシーンがとてもおもしろい。

    恐らく羊たちの沈黙やショーシャンクの空にをパロディしているんですが

    中に入れられている動物たちは極悪の犯罪者みたいな顔して威嚇してくるんですよ。

    でもみんななんとか外に出ようと思っているので、時々ある飼い主になりたい人が

    やってくるイベントのときには身繕いをして精いっぱいぶりっ子して待つんですよ。

    このように、ひつじのショーンは子供向けだからと言っていい面だけを見せようと

    しないんですね。大人は大体ポンコツだし、ケチだったりズルかったりするところを

    笑いに変えて皮肉る。こういうところがほんとにイギリスっぽいよなぁと思います。

    笑いっていうのは悪意がないと成立しないんだということをわかってるんですね。

     

    牧場主が記憶を失ってるんですがひたすら羊の毛刈り続けた記憶だけはどこかに

    残っているらしく、その毛刈りの腕がsnsなどで話題になり、謎の男Mr.Xとして

    カリスマ美容師になってしまいます。

    そこにショーンが現れても記憶はよみがえりません。

    ただ体にしみ込んだ仕事だけは思い出せるっていうのもいいですね。

    (刈ってるのは羊の毛じゃなくて人間の毛になったけど)

     

    そんな状態で、とにかく牧場主を再び田舎に連れ戻そうとして、ショーンたちは

    なんと廃材で車を作って、牧場主を再び眠らせ(羊の手にかかると人間はすぐ

    寝てしまうのです)ショーンたちとスリップは田舎に向かって出発するのですが、

    動物収容所からは完全にイってしまった捕獲男が追いかけてきて…

     

    ここまで来ると私はもう大体泣いていました。

    この息つかせぬ展開を、ストップモーションでやってることに仰天だし、なんせ

    言葉というものがないんですよ。羊のショーンの世界ではみんな「●×▽◎#※」みたいな

    感じで誰も何言っているかわかんないんです。

    脚本と演出神がかってますよ。でもやってることはあくまで小さなギャグ。

    このギャップがたまりませんね。

     

     

    あと私が一番感動したのが野良犬スリップなんですよ。

    こいつはずっと野良でブサイクなもんで、収容所の里親ミーティングで、ほかの

    動物と同じように必死で毛繕いしてニマっと笑ってみせるんですが歯がガチャガチャな

    もんでお客さんは引いて帰ってしまうわけです。

    そんなスリップはショーンたちが無事に田舎に帰ったあと、一緒にここで暮らそうと

    誘われますが手紙を置いて(何書いてあるのか犬語なので全然わかりません)

    去っていきます。そこで一台の車に轢かれそうになるのですが、運転席から出てきた

    おばさんにまたスリップはニマっと笑ってみせると、そのおばさんもまたスリップと

    おんなじ顔してたんですよ。スリップはそのおばさんに拾われ、幸せになりました。

    ひつじのショーンの世界全体にいきわたっているのが

    「ポンコツでもいいじゃない。そのままの自分でいいじゃない。」

    という空気です。

    牧場主も毛を刈る腕前以外は冴えない取り柄のないハゲのおじさんなんですが、

    ショーンたちにとってはかけがえのない人なんです。

     

    完璧じゃない、どこにでもいる冴えない奴らの当たり前に繰り返される毎日が、

    特別なんだよっていうメッセージです。

    記憶を取り戻し、再び牧場での生活に戻った牧場主とショーンたちの生活は

    以前と変わりはありませんが、その大切さにもうみんな気がついているのです。

    まあショーンのことだからそのうちまた何かしでかしそうですけどね。

     

    ものすごい執念と熱量をもって、伝わる人に伝わればいいよっていう小さな

    ギャグを繰り出してくるイギリス魂が尊すぎる。

    観終わった頃には、曇った心の鏡がピカピカになって公民館を後にしました。

     

     

     


    パラパラ座リバイバル上映

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      いよいよ最後になりました。

       

      パラパラ座リバイバル上映、5作品目はイラン映画『友達のうちはどこ?』です。

       

      覚えてる方もいるでしょうか、1990年代後半に「イラン映画ブーム」というのが

      起こったのを。当時高校生〜浪人生だった私もいろいろと観ました。

      中でもアッバス・キアロスタミ監督の「友達のうちはどこ?」は母親に勧められ

      実家の衛星放送かなんかで観てずっと心に残っている作品でした。

      ところが、同じキアロスタミ監督でも「桜桃の味」や「そして人生は続く」などは

      レンタルビデオ屋に並んでいたのですが、この作品はほとんど市場に出ておらず

      私も一回実家で観た記憶しかありませんでした。

       

      イランの小さな村に暮らすアハマッド少年は、学校で隣の席になった隣町から来てる

      貧しいクラスメイトの宿題をやるノートを誤って持ち帰ってしまいます。

      このクラスメイトは厳しくて頭のかたい教師に目をつけられていて、次宿題を

      やってこなかったらお前退学だからなと脅されていました。

      それを知っているアハマッドは「やっべーー!」となって、家に帰るや否やノートを

      ひっつかんでクラスメイトの家まで届けようとします。

      ところがイランの子供は本当に雑に扱われているんですねぇ。

      親や周りの大人たちはどこ行くんだ家の手伝いせえ、自分の宿題せえ、あれ買ってこい、

      これやってこいと次から次へとアハマッドくんの邪魔をしてくるのです。

      アハマッドくんは一刻も早く友達のうちにたどり着きたいんですが、隣町から来てる

      しか情報がなくて人に聞いたりしながらあてずっぽうで進むしかないんです。

      だんだん日が暮れてきます。自分の宿題や家事をする時間も削られていきます。

      友達のうちどこだかわかりません!!無理ゲーすぎるんです。

       

      私はこれを観た時、イランでの子供の扱いひどすぎるなと思いましたね。

      アハマッドって名前もいっぱいあって、アハマッド何人もいるんですよ。

      それくらい子供は十把一絡げに動物のように躾けられていて、人格なんか

      無視されてるんですよ。

      なのに子供の方がよっぽど大人だなと思えるんです。

      教師や親、じじいたちは、日々決まったルーティンとルールに甘んじてやり過ごして

      いるだけ。思考停止状態です。

      アハマッドくんはルールを逸脱します。まあ全然友達の家はわかんないんですが

      それでもやれることを全力でやるんですよ。

      このいじらしさ。

      結局なんやったかな。友達のうちにたどり着くことできなくて、またもと来た道を

      戻って親に叱られて、深夜に自分の宿題やって、友達の分も書き写して明日渡す

      ことにしました。

      最初からそうすれば放課後に1万歩くらい歩かなくても、親にしこたま怒られなくても

      済んだんじゃないかねって思うんですけどね。

      でもそれは最後の手段。まずはやってみた、無駄になったかもしれないけど。

       

      ほいで夜遅くまで宿題2倍やってたアハマッドくんはちょっと遅刻しますわ。

      今回ヘマやったら退学とか言われている隣の席の男の子の、涙をこらえてずーっと

      下を向いているあの絶望。ハラハラどころじゃないですね。

      そんな時にアハマッドくん登場。先生がチェックに来る前にすかさずノート渡す。

      先生何も知らずにチェックする。セーーーフ!!

      そこで映画は終わりです。

      大人から見たら、ただ子供がどっかにしばらくフラフラ行ってたなっていうだけで

      宿題も終わってますし、なんにも起こってないんですね。

      でもアハマッドくんと観てる我々だけは知ってるんです、昨晩のあの徒労を。

      冒険とかそんな響きのいいもんじゃないですよ。ただのピンチですよ。

      思えば子供の頃って、ピンチとセーフの連続でしたよね。

      私も小学校低学年の頃、学校から家に帰るまでにおしっこもらしちゃって

      どうしようと思ったら急に土砂降りの雨が降ってきて、こりゃいいやと傘を

      持ってたけどあえてささず、おしっこ全部なかったことにして家に帰りました。

      セーーーフ!!おしっこもらしたことセーフ。親はどうしたのずぶぬれで帰ってきて??

      と驚かれたけど私がおしっこの事実はなくなりました。

      そういうことの繰り返しで子供時代はできていた気がします。

       

      映画はノートをチェックされておしまい、と言いましたが実は最後にある「証拠」が

      映し出されます。先生も、アハマッドくん本人も気がついていないくらいさりげなく

      ノートに挟まれた一輪の花が現れるのです。

      それは昨日のあの道中に見つけて持ち帰った花でした。

      それがぱっと現れたかと思えばすぐにエンドロール。しびれるようなラストです。

      その一瞬で「ああこれぞ人生!」と思えるからです。

       

      パラパラ座では、アハマッドくんの希望どおり誰にも邪魔されずに突き進ませて

      あげました。

      洗濯物の林をぬけ

      老害の川を渡り

      でも結局はどこにもいけず

      花だけが知っていました

       

      一瞬映る花のシーンが、いつまでも心の中に残り続けるのであれば

      それは映画の起こす奇跡だと思うのです。

      この作品もようやくDVDが出回りはじめたようなので、ぜひ

      一度ご覧いただきたいです。

       

       

       

       

       


      パラパラ座リバイバル上映

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        こんにちは、tamaxです。

         

        パラパラ座の新作をご紹介するパラパラ座リバイバル上映。

        続いては『桐島、部活やめるってよ』です。

         

        ある日突然部活をやめ、音信不通になった学校のスター「桐島」。

        そのことで学校中のリア充、陰キャを含め大混乱が巻き起こる。

         

        パラパラ座の上映作品を選ぶとき、一つ邦画で、最近ので、そこそこ

        みんなが観たやつを入れたいなと思ったとき、真っ先に『桐島』が

        浮かびました。

        若手俳優がいっぱい出てて、若い子向けにも見えますがとても丁寧に

        作られた名作だと思います。

        この物語の中心となる「桐島」が最初から最後まで出てこないという

        ところが『ゴドーを待ちながら』にもたとえられています。

        「桐島」という絶対的中心人物が急に姿を消したことで、ざわめきたつのは

        普段全く問題なく青春を謳歌しているような、スクールカーストの上位クラス

        の連中です。

        野球部のエースとか、なんかギャルとか、モテモテ男とか。

        その点ブレないのはいわゆるイケてない層である、映画オタクの神木君たち。

        彼らは桐島がいなくなって騒ぐ連中を冷笑して見ています。

        一番やばい感じになっちゃったのは東出くん演じる野球部の子。

        松岡茉優という性格の悪いギャルと付き合ってたり、成績も優秀で野球もうまくて

        イケメンというスーパーボーイです。

        だけど彼はいつもボケーっとしてて心ここにあらず。

        自分は一体何をしたいのか、何しても楽しくないし、これからどうしたらいいのか。

        「桐島」というカリスマがいたおかげで(あれ桐島って「カリスマ」のモジりかな)

        ごまかされてきた心の空洞に気付いてしまいます。

         

        ところが最後、好きな女にはフラれるしイケてる奴らからは無視されるし、誰からも

        理解されない神木くんが、この東出に勝つシーンがあります。

        屋上で気まぐれに、絶対に交わることのない東出と神木がセッション。

        「映画が本当に好きだからやってるんだ」という無邪気な神木の言葉に、東出は

        打ちのめされ、思わず落涙するのです。

        こんな化学反応は桐島がいなくならなければ起こらなかったことでしょう。

        実際にはこんなこと高校に三年間通っても一度もないのが普通だと思います。

        それでもこういう気持ちでいればいいんだ、という勇気を与えてくれますよね。

         

        パラパラ座では分かりやすく、映画のキャッチコピーそのままにしました。

         

        全員が

        桐島を中心に振り回され

        当の桐島は

        無だった。

         

        桐島の周りには吹奏楽部やバスケ部、野球部など登場人物たちがいて

        それぞれドリブルしたりラッパ吹いたりしながらグルグル回ります。

        私がこの映画を観てすごくおもしろいなと思ったのがこの「〇〇部」という

        記号だったんです。

        (○○部)っていうのが生徒の記号になっていて、帰宅部ですらも記号であって、
        それが同じ体育館の半々とか、屋上とか狭い中でフィールドを分け合ってという、
        今になって考えると、学校って実に様々な音や動きが狭い空間にひしめきあった
        変な空間だったんだなぁと思いました。
        野球部がエイオーエイオー言ってたり卓球部がサー!とか叫んでたり、
        その遠くでは吹奏楽部がプープーやってて、演劇部があめんぼ赤いな言ってたり…
        当時はそれが当たり前と思っていたのでしょうが、今になってこういう映画の

        中でそれを見せられるとすっげー変な場所じゃん、こんなとこに3年間もいたら

        狂うわと思いました。(いたけど)

         

        しかし一番タチが悪いのはサブカル女子ぶって神木に理解を示しておきながら、
        ちゃっかりイケイケ男子に色目を使い、現実にも落合モトキと噂になった橋本愛ですね。
        この子はもし映画の神木くんが将来ほんとに映画監督として成功したら
        「私のこと覚えてる?あのときほんとはあなたのことが…」とか言って
        すり寄ってきますよ。絶対です。

         

         

         


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